左腰や右腰の痛みは、立ち上がる、座る、歩くといった何気ない動作にも影響を与え、日常生活に支障をきたす可能性がある厄介な症状です。
原因は筋肉疲労や姿勢の乱れだけでなく、神経の圧迫や内臓の異常など多岐にわたります。放置していると思わぬ病気のサインを見逃す恐れもあるため、注意が必要です。
この記事では、左腰や右腰の痛みのおもな原因や見分け方、対処法、予防法などを解説します。
左腰や右腰の痛みのおもな原因は?
左腰や右腰の痛みのおもな原因は、以下のとおりです。
- 筋肉疲労
- 姿勢の悪化
- 骨盤の歪みや身体の癖による左右差
- 椎間板ヘルニアや坐骨神経痛などの神経圧迫
- 内臓疾患
それぞれ、順番に解説します。
筋肉疲労
左腰や右腰の痛みは、筋肉にかかる繰り返しの負担が原因となる場合があります。
たとえば、長時間の立ち仕事や中腰での作業、重い荷物の持ち運びを繰り返すと、腰回りの筋肉が緊張状態に陥りやすくなります。
とくに、姿勢を保つ役割を担う背筋や腸腰筋は疲労しやすく、使い過ぎによって筋繊維が微細に損傷して炎症を起こすと、腰の痛みとして感じる可能性があります。
また、スポーツや肉体労働のように筋肉を酷使する場面では、左右のバランスが崩れることで片側の筋肉だけに過剰な負荷がかかり、結果として痛みが出るケースも少なくありません。
姿勢の悪化
日常的に前かがみの姿勢をとる機会が多いと、背骨の自然なS字カーブが崩れ、身体の一部に負荷が偏ります。
たとえば、長時間のデスクワークやスマートフォンの操作など、前かがみの状態が習慣化すると、腰への圧力が増し、筋肉や関節にストレスが蓄積されます。猫背や反り腰といった姿勢の崩れは、骨格全体のバランスを乱す要因になりやすいです。
結果として、身体のバランスが左右非対称になり、片側の腰だけが痛むといった症状につながる可能性があります。姿勢の悪化は見た目だけでなく、慢性的な痛みの原因にもなり得るため、注意しましょう。
骨盤の歪みや身体の癖による左右差
日常生活の中で無意識に身体の片側ばかりを使っていると、骨盤のバランスが崩れ、筋肉や関節に左右差が生じます。
たとえば、次のような動作には注意が必要です。
- バッグをいつも片側ばかりにかける
- 座るときに足を組む習慣がある
- 片足に重心をかけて立つことが多い
身体の片側ばかりを利用していると、左右の筋肉の使われ方に偏りが生じます。結果として、腰の筋肉に過度な負担がかかり、痛みとして現れる可能性を否定できません。
他にも、就寝時に片側を下にして寝る習慣も、特定の筋肉に圧力がかかり、筋肉疲労や血流不全を引き起こすケースがあるため、注意しましょう。
椎間板ヘルニアや坐骨神経痛などの神経圧迫
腰椎には「椎間板」と呼ばれるクッションの役割を持つ軟骨組織が存在し、背骨にかかる衝撃を和らげています。椎間板ヘルニアとは、椎間板が本来の位置から飛び出し、近くの神経を圧迫することで痛みを引き起こす症状です。
圧迫される神経が腰の片側に分布している場合、痛みが片側のみに集中することがあります。
また、腰から足先まで伸びる人体でもっとも太い神経である「坐骨神経」が圧迫されると、腰から臀部、太ももやふくらはぎにかけて、しびれや痛みが広がることがあります。
これが痛みの原因となる可能性も否定できません。椎間板ヘルニアや坐骨神経痛などの神経圧迫は、加齢や姿勢の崩れなどが発症リスクを高めるため、注意が必要です。
内臓疾患
一見すると筋肉や関節の問題に思える腰の痛みですが、実は内臓の異常が原因である場合もあります。
たとえば、腎臓結石や腎盂腎炎などの腎臓疾患では、腰の奥深くに鋭い痛みが走ることがあり、血尿や発熱をともなうケースが少なくありません。
また、膵臓や大腸、胃腸など消化器系の炎症によっても、背中から腰にかけての痛みが波及する場合があります。
更に、女性の場合は卵巣や子宮の異常により、腰に違和感や鈍痛を覚える可能性を否定できません。
内臓疾患による左腰や右腰の痛みは「関連痛」と呼ばれており、一般的に表面的な動作では悪化しませんが、早期発見や治療が望ましいです。
内臓の病気が原因で発生する左腰や右腰の痛みの見分け方
左腰や右腰の痛みは、日常生活による筋肉疲労や姿勢の乱れが原因となることもあれば、内臓疾患によって引き起こされることもあります。
なかでも、腎臓や腸、膵臓、婦人科系の異常は、腰の奥深くに痛みを感じさせる「関連痛」として現れるのが特徴です。
内臓由来の痛みは、身体を動かしても痛みの強さが変わりにくく、じっとしていても鈍い痛みが続く傾向があります。
また、発熱や吐き気、食欲不振、血尿、生理不順などの症状が腰の痛みと同時に現れている場合は、内臓疾患の可能性が高いため注意が必要です。
心当たりがある場合や、痛みが長引く、悪化するなどの場合には、早めに医療機関で診察を受けましょう。
次項より、内臓の病気が原因で発生する左腰や右腰の痛みの見分け方を順番に解説します。なお、あくまでも目安であり、全てのケースであてはまるとは限りません。
腎臓結石・腎盂腎炎の症状と見分け方
腎臓に関連する疾患の中でも、腎臓結石と腎盂腎炎は左腰や右腰の痛みを引き起こす代表的な病気です。
腎臓結石では、片側の背中から腰にかけて、突然鋭く突き刺すような激しい痛みが現れるのが特徴で、身体を動かすと更に悪化する場合があります。
横になっても痛みが和らがず、血尿や排尿時の痛み、頻尿などの泌尿器症状をともなう場合もあります。
一方、腎盂腎炎は細菌感染によって腎臓に炎症が起きる病気で、腰の奥に鈍い痛みが続き、発熱や寒気、悪寒などの全身症状が出やすい点が特徴です。
腎臓は左右にひとつずつありますが、左腎に異常があると左腰の後ろ側、右腎に異常があると右腰の後ろ側に強い不快感や痛みを覚えることが多くなります。
大腸や膵臓疾患の症状と見分け方
左腰や右腰の痛みの原因が大腸や膵臓にある場合、それぞれに特有の症状の現れ方があります。
たとえば、大腸に異常があると、下腹部から腰の後ろにかけて重だるいような鈍痛を感じやすいです。また、排便異常(下痢や便秘の繰り返し)やガスのたまりやすさ、腹部の違和感が見分けの手がかりとなる場合があります。
一方、膵臓の炎症では、みぞおちから左腰、背中にかけて放散するような痛みが、左腰だけに起こるのが特徴です。とくに、食後に痛みが強くなり、吐き気や食欲不振、腹部の膨満感をともなうことが多く、慢性的になると鈍い痛みがじんわり続く傾向が見られます。
女性に多い婦人科系疾患の症状と見分け方
女性特有の疾患が原因で、腰に鈍い痛みが現れることがあります。
たとえば、子宮や卵巣の異常によって下腹部痛に加え、腰の奥に重だるさを感じるケースがあります。
とくに排卵期や月経前後など、一定の周期で痛みが繰り返される場合は、婦人科的な要因が疑われます。
また、卵巣嚢腫が大きくなると周囲の神経や筋肉を圧迫して腰部の深い位置に痛みが出ることがあり、子宮筋腫では生理の出血量の増加や強い生理痛などの月経異常が併発しやすいのが特徴です。
他にも、ホルモンバランスの変化により、むくみや下腹部の張り、夜間に痛みが強まることもあります。
上記の症状がある場合は、早めに婦人科での診察を受けることが大切です。
左腰や右腰の痛みで受診するなら何科が適切?
左腰や右腰の痛みで受診するなら、整形外科、内科、泌尿器科、婦人科のいずれかが適切です。
ただし、適切な医療機関を受診しないと、腰の痛みが改善されない可能性があるため注意しましょう。
次項より、医療機関を受診する場合に何科が適しているかをケースごとに順番に解説します。
整形外科が適しているケース
左腰や右腰の痛みが、立ち上がるときや身体を動かすときに強くなる場合は、整形外科の受診が適しています。
たとえば、腰をひねる、反らす、かがむなどの動作や、長時間のデスクワークや車の運転後に痛みが増すケースでは、筋肉や関節、神経に問題がある場合や、ぎっくり腰、椎間板ヘルニア、坐骨神経痛などを発症している可能性があります。
整形外科での診察によって原因を明確にし、適切な治療につなげましょう。
内科・泌尿器科・婦人科が適しているケース
左腰や右腰の痛みが筋肉や関節ではなく、じっとしていても鈍く続くような場合は、内臓からくる関連痛の可能性が高いです。とくに、背中側から内側にかけて痛みが持続するようなケースは、内科的疾患が疑われます。
たとえば、排尿時の違和感や血尿、頻尿、発熱、寒気などをともなう場合は、腎臓や尿路の異常が考えられるため、泌尿器科の受診が適切です。
また、吐き気や食欲不振、腹部膨満感、消化不良などの消化器症状がある場合には、内科や消化器内科が推奨されます。
更に、女性で月経周期に連動した痛みや、下腹部の張り、むくみが見られるときには、婦人科疾患が関係している可能性があるため、婦人科での診察を検討しましょう。
判断に迷ったら総合病院で相談する
左腰や右腰の痛みがあるものの、整形外科なのか内科なのか、あるいは婦人科なのか判断がつかない場合は、無理に自己判断せず、総合病院を受診するのが安心です。
また、痛みの性質が曖昧だったり、身体のだるさやしびれ、発熱など複数の症状をともなったりする場合には、一つの診療科では対応しきれない可能性もあります。
総合病院では、最初に内科などで全体の状態を確認し、必要に応じて整形外科や泌尿器科、婦人科などの専門科へスムーズに紹介してもらえるため、診断までの時間を短縮できる場合があります。
受診する医療機関で悩んだときは、総合病院を選び、適切な治療を受ける道筋を立てましょう。
左腰や右腰の痛みの対処法
左腰や右腰に痛みを感じたら、まずは無理をせず安静にすることが大切です。
とくに、痛みが出始めたばかりの軽度のタイミングや、動くたびに痛みが強くなるような重度のケースでは、無理に動き続けることで悪化する恐れがあります。できるだけ楽な姿勢で横になり、腰に余計な負担をかけないようにしましょう。
また、痛みが急に強くなった場合や炎症が疑われる場合は、冷却材や冷たい湿布を使って患部を冷やすのも有効です。
軽度の場合におすすめのストレッチ
左腰や右腰の痛みが落ち着いてきたら、無理のない範囲で次のストレッチに挑戦してみましょう。
手順 | |
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腰方形筋のストレッチ |
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中殿筋のストレッチ |
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股関節のストレッチ |
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ストレッチは筋肉の緊張をほぐし、血行を促進する効果が期待できます。
ただし、痛みが強い急性期には無理をせず、安静を優先してください。前屈や無理なひねり動作は避け、少しでも痛みが出た場合はすぐに中止しましょう。
痛みのない範囲で、ゆっくりと呼吸を意識しながらおこなうのがポイントです。
重度の場合は整骨院や医療機関を受診する
左腰や右腰の痛みが長期間続いたり、慢性化したりして日常生活に支障が出る場合は、自己ケアだけで改善を図るのではなく、専門家の手を借りることが重要です。
整骨院では、骨格や筋肉のバランスを調整する施術によって、骨盤の歪みや姿勢の崩れを改善し、痛みの軽減や再発予防につなげることができます。
一方、痛みが長引くだけでなく、しびれや発熱、排尿異常などの他の症状がともなう場合は、医療機関での診察が必要です。
原因によっては整形外科や内科、泌尿器科、婦人科など、適切な専門科での治療が早期回復につながります。
腰痛予防に効果的な生活習慣
腰痛予防に効果的な生活習慣は、おもに以下のとおりです。
- 姿勢改善と座り方の見直し
- 筋肉を柔らかく保つ日常的な習慣
- 骨盤の歪みを防ぐストレッチや運動
それぞれ、順番に解説します。
姿勢改善と座り方の見直し
腰痛予防には、背骨の自然なS字カーブを保つ正しい姿勢を意識することが欠かせません。
まず、座る際は背もたれをしっかり活用し、腰部に負担がかからないよう深く腰掛けましょう。長時間同じ姿勢を続けると筋肉が硬直しやすいため、1時間に1回は立ち上がって軽く身体を伸ばす習慣をつけることも大切です。
また、足を組む癖や浅く腰掛ける姿勢は骨盤の歪みを招き、腰痛を悪化させる原因となるためやめましょう。
クッションや腰当てを利用して腰部を支えたり、デスクや椅子、モニターの高さを身体にあわせて調整したりすることで、無理のない姿勢を維持しやすくなります。
日常的な姿勢の見直しは、腰痛予防にも効果的なのでおすすめです。
筋肉を柔らかく保つ日常的な習慣
筋肉の柔軟性を保つことは、左腰や右腰の痛みや慢性腰痛の予防において重要です。
まずは毎日10分程度の軽いストレッチを習慣化し、腰や太もも、背中の筋肉をやさしくほぐす時間を作りましょう。デスクワーク中も肩を回したり、上半身をひねったりといった簡単な動きを取り入れることで、筋肉の緊張をため込みにくくなります。
他にも、お風呂に浸かって全身を温めることも血流を促し、筋肉の柔軟性維持に効果的です。ただし、脱水は筋肉の硬直やこわばりを引き起こす要因になるため、水分をこまめに摂取しましょう。
更に、快適な睡眠環境を整えて身体をしっかり休ませることや、腰やお腹を冷やさないよう服装や室温に気を配ることも、柔らかい筋肉を保つうえで欠かせない習慣です。
骨盤の歪みを防ぐストレッチや運動
毎日10分程度のストレッチをおこなう場合は、次の骨盤の歪みを防ぐストレッチを試してみましょう。
手順 | |
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全身を伸ばすストレッチ |
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両わき腹を伸ばすストレッチ |
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膝裏を伸ばすストレッチ |
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また、骨盤の歪みを予防するためには、日常的な身体の使い方と筋肉の柔軟性や安定性を整えることが大切です。
まず、左右どちらかに偏った動作や姿勢を避けましょう。たとえば、買い物袋をいつも同じ手で持ったり、立つときに片足に重心をかけたりする癖がある方は注意が必要です。意識的に左右均等に身体を使うよう心がけましょう。
また、スクワットやヒップリフトなどの筋トレで、大腰筋や中殿筋といった骨盤周りの筋肉を鍛えることで骨盤を支える力が高まり、安定性が向上します。
普段から身体の使い方を左右均等に意識し、継続的なストレッチと筋トレを取り入れることが予防につながります。
まとめ
左腰や右腰の痛みは、筋肉の疲労や骨盤の歪みといった姿勢由来のものから、神経の圧迫、腎臓や消化器、婦人科系の内臓疾患まで、原因が多岐にわたります。
自己判断が難しいケースも多いため、痛みが長引き、他の症状をともなう場合は、早めに医療機関での診察を受けることが大切です。
なお、軽度であれば、ストレッチや姿勢の見直し、身体の使い方の癖を整えることで予防や改善につながる場合があります。日々の小さな習慣を意識しながら、無理のない範囲で身体を整えましょう。
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この記事の監修者 Supervisor
株式会社産業医かつき虎ノ門事務所代表、労働衛生コンサルタント、日本産業衛生学会 指導医、日本内科学会総合内科専門医 勝木美佐子

1993年より産業医活動を開始。運送業、清掃業、製造業、地⽅公務員、病院、通信業、
遊技業、アパレル業、IT業、ホテル業など多岐にわたる産業の産業医業務に従事。
https://katsuki-sangyoui.com/