腕の付け根に痛みを感じると、日常の何気ない動作が難しくなることがあります。たとえば、腕を上に上げたり、荷物を持ち上げたりするだけで痛みが走り、仕事や家事に支障が出るケースも少なくありません。
この記事では、腕の付け根が痛む原因と、痛みをやわらげるケア方法を詳しく解説します。自宅でできるストレッチも紹介するので、つらい痛みから解放されたい方はぜひ参考にしてください。
腕の付け根の外側が痛いときに考えられる原因
腕の付け根とは、一般的に肩関節周辺から上腕の上部にかけての部位を指します。腕の付け根の外側に痛みがある場合、以下のような原因が考えられます。
- 肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)
- 腱板損傷
- 肩関節唇損傷
- 肩の脱臼
- 頸椎ヘルニア
それぞれの疾患には特徴的な症状や原因があり、適切に対処するためには正しい理解が欠かせません。症状が気になる場合は、まず整形外科などの医療機関を受診しましょう。
肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)
肩関節周囲炎とは、肩関節を取り巻く組織に炎症や損傷が生じることで発症する疾患です。一般的には「四十肩」や「五十肩」と呼ばれ、40代から50代にかけて多く見られます。ただし、若年層でも発症することがあり、年齢に関係なく注意が必要です。
肩関節を支える靭帯や腱、関節などの組織が老化すると、周辺が炎症し慢性的な痛みを引き起こします。特徴的な症状としては、肩や腕を動かしたときの痛みや夜間に増す痛み、肩関節の可動域制限などがあげられます。
腱板損傷
腱板損傷は、肩甲骨と上腕骨をつなぐ4つの筋肉(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)からなる腱板が損傷することで起こる症状です。これらの筋肉は、肩関節の動きを支えるインナーマッスルとしての役割を果たしており、「ローテーターカフ」とも呼ばれます。
腱板損傷はとくに40代以降の男性に多く、なかでも右肩に症状が現れることが多いのが特徴です。加齢による腱板の変性やスポーツ・転倒などによる外傷、日常動作での使い過ぎなどがおもな原因です。
症状としては、肩から腕にかけての痛みや腕を上げるときに力が入りにくい、肩を動かすとズキッと痛む、夜間に痛みで目が覚めるといったケースがよく見られます。
肩関節唇損傷
肩関節唇損傷は、肩関節を安定させる役割を持つ「関節唇(かんせつしん)」が損傷した状態です。関節唇は、肩甲骨のくぼみ(関節窩)の縁に位置し、関節の動きを滑らかに保ちつつ、脱臼などを防ぐクッションのような役割があります。
おもな原因は、野球・テニス・バレーボールなどのスポーツ動作や肩関節脱臼、繰り返される肩関節への負荷などです。とくにオーバーヘッドの動作を多くおこなうスポーツ選手に多く見られる傷害です。
症状としては肩の痛みや不安定感、可動域の制限が見られます。また、肩の深部に痛みを感じたり、肩に引っかかる感覚やクリック音が生じたりすることもあります。
肩の脱臼
肩の脱臼とは、上腕骨の先端(上腕骨頭)が肩甲骨のくぼみから外れる状態を指します。人体の関節の中でも、肩はもっとも可動域が広い一方で脱臼しやすく、脱臼のうち95%以上が関節の前方にずれる「前方脱臼」です。
おもな原因は強い外力が肩にかかることで、スポーツ中や転倒時などに発症しやすい症状のひとつです。
脱臼時には、突然の激しい痛みや肩の変形、腕を自力で動かせなくなるなどの症状が現れます。また、神経や腱が傷つくと、腕や手にしびれや感覚異常が生じることもあります。
一度脱臼を経験すると再発のリスクが高まり、とくに若年層では再発率が高くなるため、適切な治療と予防が重要です。
頸椎ヘルニア
頸椎ヘルニアは、首の骨(頸椎)の間にある椎間板が変性し、その中にある髄核が外へ飛び出して神経を圧迫することで起こる疾患です。長時間のデスクワークやスマートフォンの使用、不良姿勢、スポーツによる首への負荷がおもな要因です。
症状は段階的に進行する傾向があり、初期には肩こりや首の違和感、後頭部の痛みなどが現れます。更に進行すると、肩から腕にかけてのしびれや痛み、手の力が入りにくくなるなどの神経症状が見られることもあります。
片側の腕にだけ症状が出るケースが多いのが特徴ですが、進行すると両腕や下半身にまで影響が及ぶ場合もあるため、早期の診断と治療が大切です。
腕の付け根の内側が痛いときに考えられる原因
腕の付け根の内側とは、脇の下から上腕内側にかけての部位のことです。この部位に痛みが出ると、腕を下ろしたまま荷物を持つ動作や身体に密着させた姿勢での作業、腕を締めつけるような衣類の着用など、日常の何気ない動きでも違和感や不快感を覚えることがあります。
腕の付け根の内側、とくに脇の下あたりに痛みを感じる場合、考えられるおもな原因として以下の2つがあげられます。
- リンパ節の腫れ
- 乳がん
原因は多岐にわたるため、痛みが続く場合は早めに医療機関を受診しましょう。
リンパ節の腫れ
脇の下には多くのリンパ管が集まっており、体内の老廃物や細菌をろ過するリンパ節が集中しています。このリンパ節の炎症が、腫れや痛みを引き起こす原因のひとつです。
リンパ節の腫れは、風邪やウイルス感染、ストレスによる免疫機能の変化などにより発生しやすく、腫れたリンパ節が周囲の神経を圧迫することで痛みを感じるようになります。
通常は一時的な症状ですが、リンパ管自体に細菌やウイルスが入り込んで化膿すると、自然に治りにくくなり、薬による治療が必要になるケースもあります。
また、腫れが長期間続く場合は、悪性リンパ腫など重大な疾患が潜んでいる可能性もあるため、症状が長引くときは早めに専門医に相談しましょう。
乳がん
乳がんが進行すると、脇の下のリンパ節に転移して痛みや腫れを生じることがあります。腕の付け根の内側、つまり脇の下は乳房に近いため、がん細胞がリンパの流れに乗って転移しやすい場所です。
初期の乳がんでは自覚症状が少ないことが多いですが、進行にともない脇の下にしこりや痛みが生じます。とくに乳房と脇の下の両方にしこりがある場合は、リンパ節へ転移している可能性があるため注意が必要です。
リンパ節が腫れて大きくなるとリンパ液の流れが滞り、腕のむくみや重だるさ、違和感などを引き起こすこともあります。乳がんは、早期発見・早期治療が重要であるため、定期的な検診やセルフチェックを習慣づけましょう。
腕の付け根が痛いときの治し方
腕の付け根の痛みを緩和し、早期の回復を目指すには、痛みの状態に応じた対処が必要です。痛みのフェーズは「炎症期(急性期)」と「慢性期」に分かれ、それぞれ対処方法が異なります。
以下では、状態に応じた基本的な対処法を解説します。
炎症期は冷却して痛みをおさえる
腕の付け根に急な痛みが現れた場合は、炎症が原因の可能性が高いです。炎症期の症状は、患部に熱感がある、触ると強い痛みを感じる、腫れがあるなどで、患部を冷やすと効果的です。
アイシングや冷却用の湿布を使用して患部を冷やすことで、血管を収縮させて腫れを抑制し、痛みを緩和します。また、炎症がある状態で無理に動かすと悪化する恐れがあるため、できるだけ動かさず安静を保ちましょう。
慢性期は温めて血行を促進する
炎症が落ち着いたあとも痛みが続く場合は、筋肉の緊張や血行不良が原因となっているケースが多いため、温めることで症状の緩和が期待できます。入浴やカイロ、温湿布などを活用して、肩や腕の血行を促しましょう。
状態が改善してきたら、無理のない範囲で少しずつ肩や腕を動かしていくことも大切です。長期間安静にし過ぎると筋肉が弱り、関節が固まりやすくなります。とくに入浴後など身体が温まっているタイミングで軽いストレッチをおこなうと、より効果的です。
日常的に正しい姿勢を習慣化する
腕の付け根の痛みを根本的に改善し、再発を防ぐには、日常生活における姿勢の見直しが必要です。猫背や前かがみ、長時間同じ姿勢での作業は、肩や腕の付け根に負担をかけやすく、痛みの引き金となります。
正しい姿勢の基本は、耳・肩・腰・くるぶしが一直線になるように立ち、背筋を自然に伸ばすことです。日常生活では、肩甲骨を軽く後ろに引き、あごを引いた姿勢を意識して過ごしましょう。正しい姿勢がわかない場合は、パーソナルジムでトレーナーなどのプロに聞くのもおすすめです。
また、パソコン作業中などは1時間に一度は姿勢を変えたり、肩や背中を軽く動かしたりして、血行を促すことが大切です。隙間時間にできる肩甲骨周りのストレッチも、筋肉の緊張をやわらげるうえで効果的です。
腕の付け根が痛いときの受診目安と診療科
腕の付け根に痛みを感じた場合、原因によって受診すべき診療科が異なります。とくに痛みが長引く場合や、日常生活に支障をきたしているようであれば、早めに医療機関を受診しましょう。
痛みの程度や部位によっては、重篤な疾患が潜んでいる可能性もあるため、自己判断で済ませず、専門医の診察を受けることが重要です。
激しい痛みやしびれが続くときは整形外科へ
腕の付け根に鋭い痛みやしびれがある場合は、整形外科の受診を検討してください。肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)や腱板損傷、頸椎ヘルニアなどが原因となるケースが多く、専門的な診断が必要です。
腕を上げたときに痛みが増す、夜間に痛みが強くなる、日常の動作が困難になるといった症状がある場合は、早期に専門的な診察を受けましょう。
整形外科では、視診や触診に加えて、必要に応じてX線検査やMRI検査などをおこない、原因を特定したうえで適切な治療方針を立てます。
発熱や倦怠感をともなうときは検査を
腕の付け根の痛みに加えて発熱や全身の倦怠感がある場合、体内で炎症や感染が起きている可能性があります。こうした症状が見られる際には、内科での診察を受けましょう。
たとえばリンパ節が炎症を起こしていると、痛みと共に発熱や腫れ、だるさが現れることがあります。とくに高熱や強い倦怠感、関節の痛みなどがともなう場合は、放置せず早急に医療機関を受診してください。
風邪やワクチン接種後など、一時的な症状で済むケースもありますが、症状が長引く場合はMRIなどの精密検査による原因特定が必要になります。
脇にしこりを感じたら乳腺外科へ
腕の付け根の内側、とくに脇の下にしこりを感じる場合は、乳腺外科の受診を検討しましょう。脇の下はリンパ節が集中しており、腫れやしこりが痛みの原因となることがあります。
女性であれば、乳がんのリンパ節転移が関係している可能性も否定できません。乳房の違和感や皮膚のへこみ、乳頭からの分泌物などの症状をともなう場合は、速やかに専門医の診察を受けましょう。
乳腺外科では、視診や触診だけでなくマンモグラフィや超音波検査などによって詳しく調べることができ、早期発見・早期治療につなげることが可能です。
腕の付け根が痛いときにおすすめのストレッチ箇所
ストレッチは、痛みの緩和に有効な場合もあります。日常生活の合間に身体を動かすことで、痛みの予防や再発防止にもつながります。
以下では、自宅でも簡単に取り組めるストレッチを紹介します。自己判断でのストレッチは症状の悪化につながる可能性もあるため、不安な場合は事前の受診をご検討ください。
肩関節の外旋運動
肩関節の外旋運動は肩の可動域を広げ、腕の付け根への負担を軽減するのにおすすめです。肩の安定性が向上すると、日常の動作がスムーズになり、腕の使い過ぎによる痛みの予防にもつながります。
ストレッチする際は、痛みが出ない範囲でゆっくりと動かすことが重要です。無理をすると炎症が悪化するおそれがあるため、ご自身の体調や症状に応じて負荷や回数を調整してください。
広背筋ストレッチ
広背筋は背中の下部から腕の付け根にかけて広がる大きな筋肉で、肩や腕の動きに密接に関わっています。この筋肉が硬くなると肩の可動域が制限され、腕の付け根の痛みを引き起こす原因になることがあります。
広背筋ストレッチは、姿勢の改善や肩こりの緩和にも効果的です。とくに長時間のデスクワークやスマートフォンの使用で前かがみの姿勢になりやすい方に適しています。
継続的におこなうことで、猫背の改善や肩甲骨周りの柔軟性向上にもつながり、結果的に肩や腕の動きがスムーズになります。
まとめ
腕の付け根の痛みには、肩関節周囲炎・腱板損傷・リンパ節の腫れなど、さまざまな原因が関係しており、それぞれ適切な対処法が異なります。
痛みが強かったり長期間続いたりする場合、あるいはしびれや発熱、倦怠感などの症状をともなう場合は、整形外科や内科、乳腺外科など適切な診療科での診察が必要です。
また、炎症がおさまったあとは、肩関節の外旋運動や広背筋ストレッチなどを取り入れて、血行を促進し筋肉の緊張をやわらげることが大切です。正しいケアを日常的に続けることで、痛みの軽減だけでなく再発防止にもつながります。
ただし、痛みがある場合は自己判断だけでストレッチやトレーニングをしないように注意しましょう。
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